ゲヘナAn考察:回復篇

回復編

ヘナAnの回復、と言えばまず白炎術である。何しろ幻洋綺譚以前であればほぼ唯一といっていいほどの回復手段と言ってもよかったくらいである。その理由は単純で
 

上位回復魔法がある

 
この1点につきる。1レベルであればほかの術技でも工夫のしようがあるが、3レベルになって【降り癒す炎】、4レベルになって【癒し囀る炎】と強化されていくにつれて、明らかにほかの魔術を完全に凌駕する回復力を発揮するのである。
 
しかし、幻洋綺譚である。追加の魔術・闘技には回復手段を提供するものが増えてきたため(高レベル帯になればやはりどうしようもなくなるが)、以前よりかは幾分生命力の回復がなんとかなる領域になってきた。
ということでこのページでは炎術とその他の魔術・闘技との比較をして、炎術師以外でも十分な回復が可能なのかどうか(極論すれば、炎術師不在というPTは長持ちするのか)ということについて考察してみたい。
 

1レベルの回復手段

 
《炎術》【癒し暖める炎】 回復量:[9+未達成数]点
《雑芸術/火吹き》【優息】 回復量:[9+追加ダメージ]点
《神語術》【言の葉の槍よ、敵を貫け】 回復量:12点
道具〈エリクサ〉 回復量:2D6点

判定数は6~7程度だろうから、回復量の目安は12点強程度になるだろう。そういう点で言えば術技系の上3つの回復は回復量の点ではほぼ等価と言える。
エリクサは術技によらず回復が可能だが、回復量では見劣りがしてしまう。人間であれば闘技【活腑】で補うこともできるが、自己回復のためにランクを費やすかどうかは考えものだろう。
その他の3術技にはそれぞれ利点、欠点がある。まとめると以下のようになる。

利点 欠点
癒し暖める炎 基本射程が長い
低ランクでも効果は激減しない
とくになし
優息 消費コストが極低
(油1回分は0.66Di相当)
基本射程が短い(接触)
低ランクだと回復量がガタ落ちする(固定値は1/5/9)
言の葉の槍よ、敵を貫け 回復量が固定
攻撃にも転用できる
達成数0だと目も当てられない
判定数が高いとうまくいかない
消費気力が大きい(10+補正)

...やはりというかなんというか、まとめの時になんとかして【癒し暖める炎】の欠点を出そうと思ったが、特筆すべき欠点は見当たらなかった。

 【優息】は1ランクだけ取るような用法だと回復量が見劣りするが、3ランク取得時は基本性能はほぼ互角。射程の問題は戦闘中でなければ問題にならないと見るのなら、気力消費なしで生命力を回復する手段としては優秀と見ることができる。強靭力がベースなので愧拳・獣甲・覇杖などのサブとしては決して悪くはない。
メイン回復としてみるならば回復回数と攻撃(【豪息】がメイン攻撃手段になるか?)回数が9回で固定されるのが痛い。予備の油を入れても1時間あたり9回という制限が当初の上限になる。
火吹きの術技を身につけてなくても火吹きの壷は1個持てるので予備を持ってもらう、という方法で回避する方策はあるが、初期状態ではかなり辛いことになるだろう。
 また、【優息】は原則的に通常の攻撃の手段にのっとって判定し、命中値と追加ダメージが発生するという点を逆手に取って、回復量を上げることができる(基本80頁参照)。若干グレーゾーンが残るが、座空乗りの【攻座】、人間の種族闘技の【騎陣】などが攻防両面で活躍する可能性があるのは興味深い。さらにグレーにすると(火吹きによる炎の噴きつけで、壷を「攻撃の武器」としてみなすかどうか怪しい)【吹息】で射撃攻撃にして射撃攻撃のダメージ上昇魔術の【送り貫かせる風】とのコンボも組める。
 総括としては『回復量はある程度上限があるが、それでも【優息】を上手く活用すれば上は見れる、という点ではメンバーの合意の上でテクニカルに走れる』といえるだろう。風術師が3レベルまで回復魔術を覚えられないので、それまでの繋ぎとしてメイン回復に据えるだけの価値はあると言ってもいい(その場合風術師と別のキャラが回復役として必要になる。たぶん獣甲1火吹き3とかでスタートするのだろう)。

 方【言の葉の槍よ、敵を貫け】はこの上をいくトリッキーな使い方をする。本来は回復ではなくダメージを与える魔術。この強制力1~2の効果を使って回復しようというのだから、ちょっと事故れば大惨事になりかねない。
 この事故率を最低にするには、まず補正の利かない達成数0の可能性を減らす必要がある。具体的には判定数は「4」がベストになある。達成数0の可能性は1/16。かつ全成功で強制力が4になってもぎりぎり補正が利く。補正が不要な可能性は10/16 = 5/8(62.5%)であり、気力消費の面からも優位である。4~6のゾロ目の可能性も無視できる程度には低い。
判定数「5」の場合は達成数が0、5の両方(ともに1/32の可能性)がNGになるので事故率が変わらない上で補正の必要率が上がってしまう。判定数「3」の場合は達成数0の率が1/8になるため失敗のリスクが大きくなる(補正はゾロ目でなければ1点で済むので、成功時の気力消費の期待値は小さくなる)。
補正気力を2に減らすには魔術は3ランク覚えておくのがベター、となると知力は「2」がベストの選択になる。知力が2であれば一般技能判定でも幸運の助けを期待できるため、悪い選択ではない。
気力を使わない前衛系の享受者が物理系の「ダメージ減少」で涙目にならないように、あるいは遠距離攻撃手段として保険で取る(判定数4なら、補正でダメージを出すことも難しい話ではない)分には必ずしも悪いわけではないといえる…かもしれない(弱気)

3レベルの回復手段

 《風術》の【癒しそよぐ風】がR&R紙上掲載から幻洋綺譚へのアップデート時に追加されて、このレベル帯での回復量では炎術と競れる強さになっている。能力値5(判定数8、効果値4)の場合で回復量の期待値を見てみると以下のようになる。魔術ランクは最大で取得していることを想定している。

消費気力 回復量 回復量期待値
【癒しそよぐ風】 10+(対象数×5) 15+[効果値×3] 27
【降り癒す炎】 20 21+効果値 25

 ポイントは消費気力が回復したい対象数で変わるため、単体回復であれば【癒しそよぐ風】のほうが回復量にアドバンテージがある点だろうか。回復対象が3人、4人の場合は【降り癒す炎】のほうが気力効率が上である。一方遠距離であったり、対象が分散しているときは、「射程:50m」の【癒しそよぐ風】が地味に強い。前線と後方の味方回復を一度にするという芸当は炎術でそうそうできない技である。
 一方【癒しそよぐ風】は回復量を効果値に強く依存するという特徴のため、判定数や効果値を上げるだけで回復量を増やせるという利点がある一方、能力値が低い/出目が強制力側に偏るなどの条件によって回復量に大きく差が出てしまうという欠点もある。
 効果値を上げるだけで回復量を上げられる、という点では、魔具〈発苦〉を2個持つことで回復量を15点底上げできるし、ソードダンスの【耀舞・風火】(これもR&R初出時から修正が入った嬉しい闘技である)によって回復量が18点上がるため、そういった技を駆使することで3レベルでありながら一線級(60~70点くらいはいける)の回復量を確保できるロマン…ロマンというと失礼か。実力があると見ることができる。一方で安定性に欠け、長く使うために腐心するために必要なリソースが多岐にわたる(魔具には金がかかる、ソードダンスを使うにはランクを費やす必要がある、【耀舞・風火】を使うための闘技チットも必要になる)ため、手放しで強いと賞賛できないのも確かである。

 にも3レベルにはそれなりに魅力的な回復手段がある。【優息】を強化する《火吹きの壷・改》に【瞬息】を手に入れた火吹きは【豪息】と両方持てば似非【灰を携える炎】状態で攻防に活躍できる。同じ火吹きでは【養息】も見逃せない。テリアカ/エリクサの回復量がダイス1個分増える(回復期待値で3.5点)上に油を使わずに回復できる点は評価できる。
 幻鏡術では【賦活構成式、治癒】がある。ただし純粋な回復には強制力5が必要(確実に補正が必要になると思われる)でやや燃費が悪い点は辛い。その代わりと言ってはなんだが強制力が高いときの回復力や補助強化は嬉しいので、どちらかというと術者を回復できる超高レベル用回復魔術と見たほうがいいのかもしれない(他人を回復させるなら【限定幻鏡式・異空】のほうがよい)。